(4)鴨谷公園、あたか〜いココア編

ちょっぴりお転婆なマユちゃんと、真冬の“生乳しぼりココア”を飲むデート in 谷上。残念ながら乳しぼりはできなかったけど、瓶詰めの低温殺菌ノンホモ牛乳をゲット。ココアが作れる場所を探して弓削牧場を後にします。

――
とりあえす牛乳ゲットできてよかった。
マユちゃん
ほんと。おじさんに乳しぼりできへんって言われた時はめちゃめちゃ凹んだけどね(笑)。
――
あはは。まさかロボットが自動で乳絞りするなんて考えてもみなかったわ。
マユちゃん
それにしても、あのロボすごくない? だってあれのおかげで牛も1日中ずっと自由にしてられるんやもん。
――
牛が自分で絞られに行くっていうのもびっくりしたよね。
マユちゃん
まあでも考えたらそうやんね。人間が乳絞りしたい時だけ絞ってたらそれは牛さんも大変やわ。いくらデートとは言え、ちょっと反省したわ。

時間は午後3時すこし過ぎ。12月の太陽は低く、影もずいぶんと長くなって、早くも夕方っぽくなってきました。まゆちゃんはあいかわらずいろんな気になるものを見つけては、スマホで写真を撮ったり、絵の具だらけの手でペタペタ触ったりしています。

――
それにしてもこんな時間に住宅街歩いたら、まるで学校の帰り道みたいじゃない?
マユちゃん
あ、私も今それ思ってた。中学の時とか思い出すわぁ。
――
こうやって男の子と帰ったりした?
マユちゃん
残念ながらそういうのはなかったな。でも好きな人はいたよ。
――
片思い?
マユちゃん
うん、3年間ずっと同じ人好きやってん。でも、その人とは高校になってから付き合ったよ。はじめての彼氏です!
――
うわー、甘い想い出やん。
マユちゃん
それがそんなに甘くもなかってんけどね。クリスマスにぜんぜん趣味じゃない指輪もらったりして(笑)。あっ、公園発見!

*「鴨谷公園」は、住宅街の中にある、どこか懐かしい感じのする少し大きめの公園。使い込まれたすべり台やブランコ、砂場があって、子どもたちの遊ぶ声が通りにまで聞こえています。

マユちゃん
かわいい公園。ここならベンチもあるし、ココア作れそうじゃない?
ーー
OK。じゃあ準備しよっか。
マユちゃん
温めるものとか持ってきた?
ーー
もちろん!
マユちゃん
あははは、フツーにカセットコンロやん! 山でコーヒー淹れたりするバーナーとかじゃないんだ(笑)
――
めちゃめちゃインドア派なので、そんなオシャレなの持ってません。
マユちゃん
そうだった(笑)。
――
じゃあ、まゆちゃんは買ってきた牛乳を準備して。
マユちゃん
了解。ついに開ける時が! 
マユちゃん
なにこれ! 新鮮すぎて表面ヨーグルトみたいになってるし!
――
ちょっとそのまま飲んでみる?
マユちゃん
うん……うわぁ、めっちゃなめらかで甘い! それも自然の甘さって! 全然くどくない!
――
ほんまやね。もっと濃厚なの想像してたけど、意外とすっきりで、でもしっかり甘みがある。これは美味しいわ。
マユちゃん
これが自由な牛の乳の味かぁ。ちょっと感動した。もう味でストレスないのが伝わってくるわ。

*低温殺菌ノンホモ牛乳の美味しさにすっかり感激のまゆちゃん。このままだとココアを作らないまま飲みきってしまいそうなので、さっそくココアを作っていきます。

ココアは定番のバンホーテン。缶の裏側には作り方も書いています。
まずは鍋で牛乳を温めます。沸騰させないように注意しましょう。
牛乳が温まったら、ココアの粉と砂糖を入れたコップに少量注いで、粉っぽさがなくなるまでよく練ります。
ペースト状になったココアを鍋に移して、よく溶けたら完成。
マユちゃん
できたー。いい香りー! じゃあ早速いただきまーす!
ーー
いただきまーす。
ーー
……どう?
マユちゃん
うん、普通に美味しい。
ーー
え、普通に?
マユちゃん
うん、普通に。いや、美味しいよ。美味しいけど、でもこれやっらたら牛乳だけで飲んだほうが美味しいかも。ココアにしちゃうと、せっかくの甘みがちょっと消されちゃうっていうか。
ーー
確かにそのまま飲んだほうが牛乳自体そのものの味がよく分かるかも……。
マユちゃん
いや、だから美味しいって! 普通に美味しいって!
ーー
めちゃめちゃ気使われてるやん(笑)。さらに「普通に美味しい」って、ぜんぜん慰めになってないし!

そんなこんなでなんとかココアにありつけた2人。ちょっと思ってたのとは違ったけど、夕方の公園で淹れたてココアは、それはそれでやっぱり格別。それぞれおかわりもして、牛乳もほとんど空になりました。

マユちゃん
今日は、結局ココア飲んだだけやのに、ものすごくいろいろあった気がするなあ。
ーー
そうやね。ハンズ前で待ち合せて、そしたら手が絵の具まみれで。
マユちゃん
そうそう。それで電車乗って谷上までワープして、森歩きながらいろんな話してね。
ーー
牧場行ったらおじさんに乳しぼり無理って言われて、代わりにロボ見学させてもらって。
マユちゃん
牛とも羊とも触れ合ったし、最後にはちゃんとココアも飲めたしね。でも、ミッション果たしたら、急にお腹すいてきたわ。
ーー
あ、実は僕も(笑)。
マユちゃん
じゃあ、とりあえず三宮まで戻って、何か美味しいもの食べに行こ。
ーー
いいねぇ!

ということで、ちょこっと!現地調達ピクニック 第1回 、無事終了。真冬にピクニック、それも食材を現地調達なんてハードル高めでどうなることかと思いましたが、好きな人と一緒のデートだったらどこ行ったって楽しいものです。さて、次はどこに行って何を現地調達しましょうか。っていうか、その前に誰と行く? 次回をお楽しみに。

國久真有さん(マユちゃん)

國久真有さん(マユちゃん)

大阪生まれ、ロンドン経由、神戸在住。2007年より絵画制作を開始。近年は人体を軸にし腕のストロークと遠心力を利用し描く手法を利用したwit-witというシリーズ作品を制作。2016年より中央区山本通のアートスペースKOBE STUDIO Y3を拠点に活動。魚座のA型。好きな食べ物はチョコレート。


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