【date.KOBE info】「聴く映画館 – Touch That Sound! in KOBE」レポート

すこしフシギな試みが神戸で開催。カップルはいつもの映画デートとは違う、新鮮な体験になったかも。
OSシネマズの新しい提案、題して“聴く映画館”、これはいったい?

聞けば、ソニーが開発に10年以上の歳月をかけた音響技術を使って、5組のミュージシャンの音楽を鑑賞する、というもの。映画館では初となる試みで、今回設置されるスピーカーはなんと128ch(ふつうは2chとか5.1ch)。音が空間的に聞こえるのだそう。音のVR? フューチャーリスニング? ともかく百聞は一見(一聴)にしかず。ということで会場のOSシネマズ神戸ハーバーランドへ。この日はトークゲストにCorneliusの小山田圭吾さんが登場ということもあってか全席ソールドアウト。会場に入るとスクリーンの前にずらりとスピーカーが。なんとも壮観だ。

トークでは、聞き手の『サウンド&レコーディング・マガジン』の國崎晋さんとともに、今回のスピーカーシステムについてはもちろん、ヒューゴ・ズッカレリの立体音響、流行りのASMR、ソランジュのアルバムはこのシステムに合いそう(たしかに)など、今回の音と響きにまつわるトークを展開。自身の楽曲「あなたがいるなら -SSVR mix-」については「音の庭を巡るように楽しんでもらえたら」と小山田さん。そのあと5曲が以下の順で2回ずつ、計10曲が上映(上音?)された。

・Hello, Wendy! + zAk「Katyusha -SSVR mix-」
・Cornelius「あなたがいるなら -SSVR mix-」
・evala「See / Sea / She -SSVR mix-」
・中野雅之(BOOM BOOM SATELLITES)「untitled #01-SSVR mix-」
・清水靖晃「コントラプンクトゥス I -SSVR mix-」J.S.バッハ「フーガの技法」より

もう、1曲目から見えるはずのない音を無意識に追いかけてしまった、のはここが映画館だから? どーんと音が飛び出してきたり、上下左右に移動したり、回ったり、後ろで微かに鳴っていたり。なんというか、そこに音がある、という感覚。Touch That Sound!も伊達じゃない音楽体験。再生中、暗闇のスクリーンにはアーティスト名と曲名のみが表示されるのだけど、音だけに集中できる、というのは画(え)がトゥーマッチな時代には贅沢な環境かもしれない。

再生された5曲はこのシステムで鳴らされることを前提に制作やミックスが行われたそうだが、音の筆致というか、サウンドデザインというか、それぞれのアーティストの手法がまったく違うことも興味深いところだった。例えばCornelius「あなたがいるなら -SSVR mix-」はボーカル、ギター、ドラム、シンセサイザーなど曲を構成するパーツが空間の中にバラバラに解散! しながらも1つの楽曲として耳の周りでぐるぐると進行していく。その様はファンタジックで、そして生演奏とはまた別の目眩く臨場感があった。以前、とあるミュージシャンが、音が耳に届くまでを作曲する、と語っていたけれど、まさにこのシステムが普及すれば“どう聞かせるか?”へのアプローチが音楽家の肝となるかも。今回、使用されたサウンドシステムSSVRは今後、サウンドアートなどの分野でも活躍するのでは。

終演後、来場された方(オーディオマニアだそう)に話をうかがってみると「ふだん聞いている音とぜんぜん違う」と興奮気味に語ってくれた。「自分の周りを音が回り込むような感覚があった。Corneliusがこのシステムにいちばん適していたと思う」とのこと。
そして別の方は「一番後ろの席から(休憩時に)一番前に移動しましたが、位置によって聞こえ方がまったく違ったのが印象的。まるで音が生き物のようだった」とのこと。

最後に、逆説的に言えば、ふだん私たちは外に出れば車の音や人の声など、さまざまサウンドに囲まれているわけで、すでに音のVRを体験しているとも言える。そんな当たり前に気付かされた“聴く映画館”体験。聴覚がリセットされた、というのは大げさだけど、日常の音への感覚がちょっと新鮮になった気がする。体験された方ならこの感覚にきっと納得してくれるはず。それにしても映画館で音だけ、なんてかなり斬新。OSシネマズによる発想の転換? デートで映画は大定番、でもこんな体験はふたりの記憶にグッと刻まれるはず。というわけで、これからの映画館は上映だけじゃないのかも。こんな新しい可能性には期待してもよい?


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「聴く映画館 -Touch that Sound! in KOBE-」
開催日 | 2019年11月15日(金)〜11月21日(木)
会場名 | OSシネマズ神戸ハーバーランド スクリーン⑩ 50席
料金 | 1,000円均一 (トークショー付き上映会は4,000円)
上映時間 | 60分程度 5曲×6分=30分 ×2回
※上映スケジュール・料金等イベント詳細に関してはOSシネマズ公式サイト(下記URL)をご覧ください。
アクセス | 神戸市営地下鉄ハーバーランド駅から徒歩約6分
お問合せ | オーエス株式会社 TEL:06-6361-3568(当企画に関するお問い合わせ)
OSシネマズ神戸ハーバーランド TEL 078-360-3788(上映スケジュールに関するお問い合わせ)
URL | https://www.rittor-music.co.jp/rittorbase/touchthatsound/kobe(Touch that Sound in KOBE 公式サイト)
https://www.jollios.net(OSシネマズ公式サイト)


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