牧場で“生乳しぼりココア”(2)

(2)谷上から山田道、マーチンで山歩き編

絵の具だらけの手をしたマユちゃんと、“生乳しぼりココア”を呑むため、いざ北区にある弓削牧場へ。三宮から地下鉄/北神急行に乗って谷上へ行き、そこからハイキングルートを30分ほど歩いて向かいます。

「谷上ついたー」
「ついたねー。谷上ぜんぜん近いやん。」
「電車乗ってたの10分くらいじゃない? それもずっと地下やったからちょっとワープしたみたいな気分」
「あー、ケーブルカーとかロープウェイみたいな」
「そうそう(笑)。あ、見て見て。まだめっちゃ紅葉してるし!」
「おー、ほんまや」
「平日だけどすごい休み感でてきた。よーし、じゃあ行くぞー」

駅から高架沿いを5分歩くと、森林植物園へと続くハイキングコース、通称山田道に入っていきます。

「うわー、めっちゃ普通にハイキングやん」
「(ドクター)マーチン履いてきて正解やったわー」
「マーチンってアウトドアだっけ。って言うか、アウトドアっぽいこととか普段する?」
「しないけど、山とか行くのは好き。家の近くから摩耶山に上がるケーブルカー出てて、たまにふらっと行ったりするよ。でも山ガールみたいな靴は持ってないなぁ」

「ところでマユちゃんってもともと神戸?」
「ううん、もともとは東大阪。今も実家は東大阪にあるよ」
「じゃあけっこう下町っていうか、けっこう工場っていうか」
「まあそうかな(笑)。だからこういう自然っぽい自然のところに来ると、すごく非日常な感じする」
「今日はこの後、牧場で乳しぼりもありますよ」
「あ、そう! 今思い出したけど、子どものころ夏休みとかによく家族で徳島のおばあちゃんの家に車で行ったのね。おばあちゃんちも祖谷っていうすごい秘境みたいなところなんだけど、途中で淡路島の牧場に寄るの。それがすごく楽しみやったな。牛見たり、ソフトクリーム食べたり」

「絵って子どもの頃から描いてたの?」
「全然。描き始めたの日本の美大入ってからだから」
「その前はロンドンだっけ」
「うん。それまでインスタレーションとかやってたんだけど、正直絵とか全く興味ないっていうか」
「あぁ、わかるメディア的に」
「そうそう。でもたまたま授業で描く機会があって、自分でもびっくりするくらいアドレナリン出たの。それでもうインスタレーションなんかやってる場合じゃないぞって、いきなりおっきいベニヤ板24枚並べて大きい絵描いたり」
「急やなぁ(笑)」
「なんやろね。今もあんまり変わらへんような気もするけど」

「3年前の冬にね、ボリビアのウユニ塩湖ってところに行ってん」
「旅行で?」
「大学から研究費もらっていったから、いちおうリサーチ」
「何をリサーチしにいったん?」
「白」
「白? 色の白?」
「そう。その頃ずっと絵描きながら、白色って何やろうってそればっかり考えてて。白ってつまり反射やんか。で、ウユニ塩湖って冬になると一面に氷が張って、鏡みたいに光を反射するの。その写真を雑誌かなんかで見て、これだぁって」
「なにそれ(笑) で、白のこと何かわかったん?」
「えー、どうやろ。でも楽しかったよ」

こんなとりとめのない話をしながら30分ほど歩いて、最後に少し急な階段道を登りきると、平らに整備された小道に出ました。すぐそこに電線が走っているのが見えて、住宅地がすぐそこまで迫っているのがわかります。そして、ちょっと見落としそうな標柱に小さく「弓削牧場」の矢印を発見!

次回はついに弓削牧場に到着。はたして生乳しぼりココアは飲めるんでしょうか。お楽しみに。

(3)に続く————————

國久真有さん(マユちゃん)

大阪生まれ、ロンドン経由、神戸在住。2007年より絵画制作を開始。近年は人体を軸にし腕のストロークと遠心力を利用し描く手法を利用した「wit-wit」というシリーズ作品を制作。2016年より中央区山本通のアートスペース「KOBE STUDIO Y3」を拠点に活動。魚座のA型。好きな食べ物はチョコレート。


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